第72回名人位・第70回クイーン位挑戦者決定戦

2025.12.06
作成者: 慶應かるた会 五段 早川裕章

【クイーン位挑戦者決定戦】

1回戦
 西牧美渚 六段(慶應かるた会) × 10 ◯ 中島莉衣瑠 五段(神戸大学かるた会)

東西の予選を勝ち上がった両者は、ともに感じの速さが持ち前であり、この1年で、大きく成長し、強豪選手への仲間入りを果たした。
夢のクイーン位戦の大舞台をかけて、いよいよ初戦が始まった。

中島は自陣左中段を素早く守るなど、スタートダッシュに成功。西牧は、攻守に3連取するものの20「きみがためは」21「はるす」22「はなさ」で立て続けにお手つきするなど、初の挑戦者決定戦の雰囲気に飲み込まれたのか、28枚時点で21-13と中島に大きくリードを許す。
中盤に入っても中島は、攻守に素早い取りが冴え、7-17と着実にリードを保ち試合を折り返す。
一方、西牧は、なんとか落ち着きを取り戻し、得意の自陣左をキープしながら敵陣を攻め55「ちぎりを」では、中島のダブルを誘い、12-84枚差まで追い上げる。しかし西牧はここで痛恨の2度のお手つき。中島に流れを渡してしまう。
中島は最後4-10からの敵陣左の81「おく」84「いまこ」を早く攻めるなど4連取して、10枚差で勝利。初のクイーン位挑戦者に王手をかけた。

2回戦
 西牧美渚 六段(慶應かるた会)  〇 6 × 中島莉衣瑠 五段(神戸大学かるた会)

後がなくなった西牧は中島の速い攻めに見舞われながらも序盤やや優位に立ち25「おぐ」から3連取して16-204枚リード。その後も西牧がリードを保つ展開で、前半戦は11-15と西牧の4枚リードで折り返す。
後半戦の入りでは両者が攻守にいい取りをみせ、西牧の35枚リードで試合は進む。西牧は67「ひさ」でお手つきをして9-72枚差まで詰め寄られるが、中島はこのチャンスを生かせず、71「ながら」でダブルになるお手つきを返してしまう。西牧はここからラストスパート。4-7から80「あらし」84「こころに」87「こころあ」と敵陣に攻めて1-7。最後は91「みかの」を敵陣左で丁寧に抜いて6枚差で勝利。対戦成績を11敗のタイにした。

3回戦
 西牧美渚 六段(慶應かるた会) ◯ 8 × 中島莉衣瑠 五段(神戸大学かるた会)

どちらが勝っても初めてのクイーン位挑戦者となる3回戦。序盤は西牧、中島とも相手の攻めを阻みながら強烈な攻めも出し、3枚の差がつかない均衡した展開で、26枚時点で17枚セーム。
西牧は31「たれ」でお手つきをするが、次の34「わすれ」で中島の強烈な攻めを得意の左下段で必死の押さえ、審判に判定が委ねられるも西牧の取りとなり、ここから西牧が怒涛の取りで、6-16と一気に10枚差と大きなリードを奪う。
いよいよ、夢のクイーン位戦の大舞台が頭をかすめたか、西牧はこの後、63「よのなかよ」64「これ」で立て続けにお手つきをして一気に5枚差まで詰め寄られる。しかし、このチャンスを中島は生かせない。この後、西牧は、攻守に確実な取りをみせて8枚差で勝利。
西牧は、中島を21敗で下し、いよいよ、同会の後輩、矢島聖蘭クイーンが待つ近江勧学館の畳に挑戦者として上がる。

70期クイーン位決定戦は、クイーン位、挑戦者とも慶應かるた会となったが、クイーン位戦での同会対戦は、2001年第45期クイーン位戦以来25年ぶり。この同会対戦にも注目が集まるところである。