第4回ちはやふる小倉山杯の見どころ

2023.02.12
作成者: 審判長 西郷 直樹

今回出場する8名の選手の顔ぶれを見ると初出場は僅かに2名。お互いに相手を知り尽くした対戦となるが、これまでと結果が同じになるとは言い難い。その理由は大きく3つ。ひとつにはこの大会は優勝までに3回しか対戦がないこと。力配分を考えずに戦えるため、体力や経験による影響が通常の大会より少ないと言える。もうひとつはトップ選手でありながら発展途上の選手が多いこと。これまでの戦績はあまり意味をなさないだろう。そして最後は、この大会を本気で勝ちたいと思っている選手が増えていること。強い選手との対戦を楽しみたいと思う一方で、倒したい相手との対戦を制してタイトルを獲得したい、それが実現できる大会と対戦になっているからだ。

また注目したいのは開催のタイミング。昨年、一昨年はコロナの影響により4月開催であった。今年は当初予定通り2月に開催される。このタイミングが意味するところは大きい。8名の出場者のうち4名は1月の名人位・クイーン位決定戦に出場しており、実力を維持できている可能性が高いからだ。その他4名の選手についても昨年から今年にかけてはほぼ予定通り大会が開催されており、実践から遠ざかっている選手は少ない。すべての対戦で高いレベルの試合が期待できると考える。

今年も1回戦の組み合わせから非常に面白い。それぞれの対戦について見どころをあげる。

■山添vs太田

前回大会の優勝者でありクイーン戦で防衛を果たした山添クイーンに初出場の太田選手が挑む。山添クイーンは防衛戦で見せた接戦を制する勝負強さに磨きがかかり、ますます力と自信をつけ安定感が増した。加えて直近の大阪大会でも優勝を飾るなど勢いもあるように感じる。しかしながら昨年6月の女流選手権決勝戦で敗れた相手がこの太田選手である。2枚差という好ゲームではあったが太田選手の陣地に関係なく鋭く反応する取りに押された。決勝戦(6回戦)で対戦した当時と違い今回は1回戦で、山添クイーンにとってはリベンジマッチとなる。またクイーン位のタイトルを狙う太田選手にとっては自分の力を試す絶好のチャンスでもあり、お互いに負けられない試合となるだろう。

■三笘vs山下

クイーン戦で惜しくも敗れ準クイーンとなった三笘選手ではあるが、初出場ながら堂々とした取りで山添クイーンを追い詰めた。素晴らしい取りを要所で見せ、これからの成長に繋がる名勝負を演じた。一方の山下選手は前回大会で連覇を逃したが、4年連続の出場となる今回はタイトル奪還を狙う。ほぼ大会に出場しない山下選手にとって前回の4月開催は調整が困難であったようだが、敗北を機に全日本選手権では見事優勝して今大会への出場を決めた。それも6回戦を戦って名人、クイーン、準名人を倒しての完全優勝であり勝負強さと貫録を見せた。両者は第2回大会で対戦しており山下選手が11枚差で勝利している。三笘選手にとっては山添クイーンに加えて越えなければならない相手とのリベンジマッチとなり、緊張感のある試合が期待できる。

■川瀬vs三好

昨年の1回戦と同じ対戦であり、前回は三好選手が5枚差で勝利して二人の対戦成績は三好選手の3戦3勝となった。川瀬名人としては1月の名人戦で初防衛を果たしたばかりで、調子や気持ちの低下も考えにくい。ベテランらしく上手さが際立つ三好選手への苦手意識やこれまでの負けイメージがどう影響するかではあるが、ここで何としても勝っておきたい相手だろう。一方の三好選手は昨年の試合後、「昔みたいに速く取れない」と言っていた。相手が誰であれ淡々と試合を進める自分のスタイルを貫くとみられるが、これまでの経験と持ち前の集中力で、この初戦に全てをかけて川瀬名人を倒しにいくようなかるたに期待したい。

■粂原vs堀本

名人戦挑戦者決定戦の再戦となる。2勝1敗で勝利して名人戦に駒を進めた粂原準名人ではあるが、初戦を落としたのは想定外だったのではないだろうか。名人戦では調子を上げ、新しい取りを披露するなど強さの幅が広がったように思える。本大会ではこれまで思うような結果を残せていないことに加えて、倒したい川瀬名人、山下元クイーンが待ち構えている。今年にかける意気込みは強いものがあるのではないだろうか。一方の堀本選手は直近の横浜大会で優勝して調子を再び上げてきているようだ。今回は3回戦勝負ではないため、この初戦でリベンジを果たすべく準備をしているはず。両者ともに変則的な取りをするところがあり、どちらの策がはまるのか、そしてペースを掴むのかが勝負の分かれ目になるだろう。

※写真は第3回ちはやふる小倉山杯の写真です。