挑戦者決定戦の見どころ

2022.11.17
作成者: 挑戦者決定戦審判長 永世名人 西郷直樹

【挑戦者決定戦について】

 本大会はその名の通り名人位・クイーン位への挑戦権をかけた大会であり、他のものとは明らかに異なる。和装であること、会場に男女1組ずつの選手しかいないこと、同じ相手との3回戦勝負であることなど、選手が感じる空気だけでなく戦い方も大きく異なる。10月に開催された東西の予選を勝ち抜くことができたのでこの決定戦もがんばろう、という程度の臨み方では準備不足と言える。人は一か月で急には強くなれないからである。名人位・クイーン位になることを見据えてこれまでどれだけ準備をしてきたか、その上で対戦相手が決まった後の一か月をどのように過ごし、1月の名人戦・クイーン戦をどのように戦うのか、そういったことまでリアルに描いて準備している選手が勝利すべき大会である。ただ人は一か月もしくは大会当日であっても成長することはできる。特に若い選手は何かのきっかけを掴めば成長が可能で、かるたを支える重要な要素と言える自信を身に付けることが可能な大会でもある。実力に加えて場と相手にどれだけ適応できるのかが勝負の分かれ目となるが、試合の中でもどのように成長していくのかにも注目していただきたい。

 

【名人位挑戦者決定戦】

京都小倉かるた会の粂原圭太郎前名人と東大かるた会の堀本秋水選手の対戦。
 粂原選手は混戦と言われた西日本予選を危なげなく勝ち抜き、その実力だけでなく名人位奪還に向け並々ならぬ気迫も感じる。おそらく1月の名人戦の時よりも仕上がっている印象を受ける。
 対する堀本秋水選手はA級入賞常連ではあるものの、東日本予選は本命視されたわけではなかった。しかしながら粘り強い試合運びで最終的には勝っていた。見た目にはあまり分からないような勝負強さがあるのだと感じた。
 粂原選手の圧倒的有利と思われるが、堀本選手の相手陣右への攻めがどこまで通用するのか、そしてしぶとく食らいついていくことができるのかがポイントになるだろう。

 

【クイーン位挑戦者決定戦】

福岡かるた会の三笘成選手と早稲田大学かるた会の林真尋選手の対戦。
 三苫選手は福岡という恵まれた環境に身を置き、大学、社会人になってからさらに力をつけ、今では「ちはやふる小倉山杯」にも出場するトップ選手となった。クイーン位の獲得を見据えて練習を積んできたものと思われ、念願の西日本代表に決定した。このまま一気に勝ち上がりたいところだろう。
 一方の林真尋選手は早稲田大学へ入学し環境が変わったばかり。これまでA級優勝の経験もなく予選を勝ち抜いたのが初めて。これまで憧れの存在だったクイーン位が少し近づいたことで、大きく化ける可能性も秘めている。
 両選手の共通点は小学生からかるたを始めていること。自陣相手陣に関係なく取ることができ、基礎がしっかりしたオールラウンダーと言える。実力と経験は三苫選手の方が上だが、林選手がミスを抑え我慢比べのような試合展開に持ち込むことができれば、チャンスが生まれるだろう。

 

※写真は、昨年の挑戦者決定戦の写真です。